七つ目の原理原則「収益性の確保」について、いくつかの角度から見てきたが、ここで改めて、この課題の今日的な意味を確認しておきたい。なぜならば、今は収益を確保することが難しくなり、これに真剣に取り組んでいく必要があると考えるからである。
ここ2~3年の日本の観光産業、旅館業界は、大きく三つの流れにもまれてきている。
一つは言うまでもなく、コロナ禍で落ち込んだ景気からの回復過程と、コロナをきっかけとした市場の構造変化という流れ。
二つ目は、日本経済の30数年におよぶ長期停滞のために蓄積した物価上昇率の「内外格差」が、コロナ後の米欧の利上げによって、円安という「電位差」を生んだこと。これが物価の高騰を招き、他方でインバウンドの急増をもたらす要因の一つとなっている。
そして三つ目は、これらよりもゆっくりと、しかし確実に進みつつある「人口の減少」である。人件費の上昇傾向は、所得水準を高めようとする国の政策もあるが、より本質的には、労働力需給のアンバランスに市場原理が働いた自然な結果と言える。最低時給2千円、3千円時代も、もしかするとすぐ先のことかもしれない。
会員向け記事です。