筆者の大好物、「シーザーサラダ」。主役のロメインレタスはエーゲ海コス島原産で、コスレタスとも呼ばれる。一般的な玉レタスと違い半結球で、シャキシャキした葉脈、やわらかな葉先と、いろいろな食感が楽しめる。近頃、通年で国産品が手に入るようになった。
お店のメニューにシーザーサラダがあれば必ずオーダーするが、残念なことも。一番ガッカリなのは、ロメインレタスでなく、他の葉物類の時。葉っぱのせいじゃない。「シーザーサラダ」と名乗らなければ問題ないのだ。そして、フツーの粉チーズがかかっているとき。塊からおろしたてのパルミジャーノ・レッジャーノの方がロメインレタスによく絡み、濃厚な味わいになるからだ。
もう一つは、できればアンチョビが入っているとうれしい。だが実は、オリジナルレシピには入っていないそうだ。そもそも、オリジナルレシピって? それは、このサラダを考案したシーザー・カルディーニ氏のレシピだ。
このサラダの名称の由来を、「ブルータス、お前もか!」でおなじみの、ジュリアス・シーザーが好んだからといわれることもあるが、そうではない。メキシコのティファナという町にあった、シーザーズ・プレイスというレストランが発祥だという。そのオーナーこそ、シーザー・カルディーニ氏なのだ。
1924年のこと。時は禁酒法時代。7月4日のアメリカ独立記念日を祝うため、大勢のアメリカ人が国境を越えてティファナに押しかけたらしい。アメリカでは飲めない酒が飲めるからだ。シーザーズ・プレイスも多くの客でにぎわっていたが、あまりの盛況ぶりで、ついに食材が底をついてしまった。そこで、オーナーのシーザー・カルディーニ氏が、唯一残っていたロメインレタスを使い、客を楽しませるため、客席の真ん中でサラダを作ったのが始まりとか。
諸説あるが、シーザー氏の娘で、後にドレッシング製造販売会社を継いだローザ・カルディーニ女史は、元祖はアンチョビを入れていなかったとしている。シーザーサラダの発明者の権利を争った中に、シーザー氏の兄弟アレックス氏も含まれていたが、彼はアンチョビを使うスタイルだったともいわれる。だが、もともと即興で作った料理ゆえレシピは定かでない。
ローザ女史のレシピは、大きなボウルにロメインレタスを入れ、ガーリックオイルをかけて塩コショウした後、1分ほどゆでた半熟卵とウスターソース、レモンジュースを入れ、2~3回かき混ぜてから、パルメザンチーズとクルトンを入れてもう一度混ぜるというシンプルなもの。
わが家はアンチョビ入り。妹がよく作ってくれるが、掛け値なしで絶品! テーブルにチーズとチーズおろしを置き、各自「追いチーズ」をしつついただく。作りたてを食すのが鉄則。時間がたつと水っぽくなってしまうから、家族がそろってから材料をあえる。
ワインも進む、口福なひと時。シーザーさんに感謝♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
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