新米の季節がやって来た。でも、去年までとはちょっぴり違う。わぁ~い♪と素直に喜べない。「令和の米騒動」と呼ばれるコメ不足問題が、解決したとは言えないからだ。コメ不足と言われ始めたのが6月ごろ。コメの収穫量を示す作況指数では、平年100に対し、平成の米騒動時の平成5年産は74だったが、令和5年産は101というから凶作とはいえない。なのに、ナゼコメがないのか?
新米と古米が入れ替わる端境期で、コメの在庫が最も少なくなる8月にさまざまな要素が重なったことが原因といわれる。夏休みで学校給食がなく、家庭で子供に1日3食用意しなければならない時期に、南海トラフ地震臨時情報が発表され、買い占めが加速。店舗での購入制限の報道や、台風や集中豪雨への不安も買いだめをあおった。
ほかにも、コロナ禍の反動で外食やインバウンドが好調になり、コメの消費が増えたことや、ウクライナ問題で世界的な小麦価格高騰を受け、パンや麺など小麦製品が値上がりする中、割安感があるコメの需要が増えたという側面も。
供給面では、作況指数が101といっても、猛暑の影響で大きさが基準に満たないものや、白く濁り精米時に砕けやすいものが多く、精米後のコメ流通量が前年比13万トン減となったらしい。また、生産量は減っているのに、消費量は十年ぶりに増加に転じ、需給バランスが崩れたことも、コメ不足に拍車をかけた。
新米は出回り始めたが、コメの価格高騰には驚くばかりだ。筆者が役員を務めるお弁当製造販売会社でも、大きな打撃を受けている。お米を作っていただいている契約農家さんが、急激な値上げを心配して駆け付けてくださった。コメの価格は地域の組合で決めるため、生産者さんの自由というワケにいかないのだ。価格高騰によるコメ離れが心配だと仰っていた。
コンビニでも、コメが主役のお弁当やおにぎりなど「米飯」への影響が懸念される。1978年に、のりを食べる直前に巻く「パリッコフィルム」を開発したセブンイレブンの公式サイトを見てビックリ! おにぎりの掲載アイテム数が極端に少なく、代わりに「一部商品の価格・規格の見直しをさせていただいております。何卒ご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」という文字が。
一度食べてみたいと思っていたローソンの「具!おにぎり まるで明太のり弁」。価格は何と税込み322円だ。しかも10月のリニューアルでややコンパクトになった気がする。ならばオリジン弁当の「タルタルのり弁」税込み356円の方がよいという声も聞こえてきそう。コチラも4月時点の税込み320円からビミョーに値上げしていた。
平成の冷夏によるコメ不足から、令和の猛暑によるコメ不足へ。減反政策や食糧自給率なんて難しいことより、温暖化防止のために自分でできることをコツコツやっていくしかない。おいしいお米をずっと食べ続けられるように…。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
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