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【駅メロとわずがたり34】JR池田駅(1)ワインとドリカムの街に響く音色 藤澤志穂子

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 JR北海道、根室本線の池田駅(池田町)では、駅員の常駐は朝から午後3時半まで。この間に着く特急の到着を知らせるメロディが、Dreams Come True(ドリカム)「晴れたらいいね」「Almost Home」だ。同町出身のメンバー、吉田美和さんが故郷の空を想って書いた歌とされる。音源は事務所が提供したCDにオルゴール調のアレンジで8分ほどあり、特急列車が着く5分ほど前に駅員さんがかけ、ホーム、駅構内、駅の外に置いたスピーカーからも流れて到着を知らせる。列車が着き、降りて来た客が改札を出るまでを見送る長さに設定されている。「ファンの方も良く聴きに来られますね」と駅員さん。構内には「ドリカム」の歌に登場する「タンポポの堤防」のモデルや、吉田さんがかつて通った店などゆかりの場所を歩くための「ドリカムマップ」も置かれている。

 9月中旬に訪ねた際、駅構内に植えられていたワインブドウは色づき、駅前にはワイン型の噴水が水しぶきを上げ、巨大なワインオープナーのオブジェが鎮座していた。池田町は「ワインの町」でもある。寒冷地の街おこしのため、町長だった丸谷金保氏(1919~2014)が自生する山ブドウを使ったワインづくりを発案。1963年に日本で最初の公営ワイナリーとして創業した。拠点となる「池田ワイン城」(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)ができて今年2024年は50周年、そしてドリカムのデビュー35周年が重なった。その感謝祭が7月6、7日に池田町で開催され、7日にはドリカムが「ワイン城」の麓で野外ライブを行った。2日間の通し券のみの販売で、ぶどうジュースとワインが飲み放題。2日間で1万5千人を動員し、7日のライブには8千人が全国から集まった。「自動車で来た方たちも多かったので、車内泊ができるよう場所を開放したんですよ」と安井美裕町長。吉田さんは「池田町のイメージに合った選曲」として「晴れたらいいね」や「あなたとトゥラッタッタ♪」を熱唱。池田町の防災無線のチャイムでも流れている「Almost Home」を、歌おうとした吉田さんが感極まって涙ぐむ場面もあった。

 ドリカムと池田町の縁は深い。さかのぼると2003年9月に起きた十勝沖地震で被害を受けた故郷に「何かできないか」と考えた吉田さんとリーダーの中村正人さんは2005年、「ワイン城」のそばにドリカム関連の資料館「DCT garden IKEDA」を設立した。旧売店だった施設を活用、ステージ衣装や関連グッズが展示されている。中村正人さんは「十勝の風景が吉田の歌を作っている。今の僕があるのは吉田のおかげ。今の吉田があるのは池田町のおかげ。だから2人で池田町を応援したい」。ファンクラブの会報誌にこう話している。ドリカムと池田町が共同で運営するワイン用ブドウのオリジナル品種「山幸」の畑も近くにあり、このブドウで醸造されたワインを成人式で贈呈する粋な計らいも行われている。

 ※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)、「駅メロものがたり」(交通新聞社新書)など。

池田駅前ではワイン型の噴水が水しぶきを上げる

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