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JPiX支援で新生 浦島観光ホテル 代表取締役社長 松下哲也氏に聞く

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順次改修、地域経済の根幹担う 従業員の待遇改善、人材に投資

ホテル浦島などを展開する浦島観光ホテルグループ(和歌山県那智勝浦町)は昨年12月、地方創生や投資支援を行う日本共創プラットフォーム(JPiX)に全株式を売却し、新生ホテル浦島としてスタートを切った。今年1月に代表取締役社長に就任した松下哲也氏に、今後の事業展開や、方向性を聞いた。

 ――社長に就任したきっかけは。

 「新卒入社から22年間、帝国ホテルに勤務しホテルのオペレーションを学んだ後、他のホテルの経営に参画した。ホテルの新規立ち上げや、ホテル運営を管理する業務を担う経営の中核にいた。ホテルマネジメントに携わった経験を買われたと思っている」

 ――ホテル浦島は、なぜJPiXに支援を仰いだのか。

 「後継者問題などもありオーナー一族で経営されることを断念され、地元金融機関にご相談されていたようだ。そのタイミングでJPiXが南紀白浜空港の運営を手掛けることになり同社が中心となって和歌山の観光と交通インフラを盛り上げていこうというタイミングの中で、地元の有力な宿泊施設であるホテル浦島を取得することになった。浦島が持っているポテンシャルを評価したと思う」

 ――今後の展開は。

 「政府の補助金なども活用し、数十億円をかけた大規模リニューアルを予定している。ホテル浦島には本館、山上館、日昇館、なぎさ館の四つの館があるが、2030年ごろまでに順次、改修を行う。これからデザインを決めていく段階だが、この四つの館のターゲットと、ポジショニングを明確にするつもりだ。具体的には富裕層を狙うか、宿泊者数を狙うかといったところだ」

 「われわれはミッション、ビジョン、バリューを掲げている。当社は地域の全宿泊施設の売り上げのうち40~50%を占めており地域経済の歯車になっている。今後はこの比率をもっと上げて地域経済の根幹になりたいと思っている。再来年の26年に開業70周年を迎えるが、これをさらに100周年を目指してやっていくのがミッション。ビジョンは関西ナンバーワンホテルを目指すことだ。ホテル浦島は有名で、大洞窟温泉が認知されているが、温泉以外の部分をバージョンアップさせていきたい。バリューは、挑戦することを大切に、さらにスピード感を持って、笑顔で取り組んでいくことだ」

 ――10月1日から賃上げを実施した。

 「当館には約230人の従業員がいるが、賃上げ率は正社員、契約社員が10%、パートが7%、管理職が5%で、平均7%となる。地域経済の根幹になると言ってはいるもののその実現には従業員の協力が欠かせない。また、当社の平均年齢は50歳に近く、高齢化といった課題を抱えている。生産性向上に努めながらより質の高いサービスを提供するには、従業員が働きやすい環境を整える必要がある。この夏に実施したボーナスの大幅アップに続くもので、実現利益を従業員に還元し、人材への投資を積極的に行うと公約に掲げた。従業員の待遇を改善し、モチベーションを上げて、売上増を図っていく」

 ――インバウンドが増えていると聞いた。

 「一番大きな要因は、熊野古道が世界遺産に登録されて今年で20周年だが、これを行政や、観光機構を中心に国外に向けてキャンペーンを展開している。そのため、欧米を中心にインバウンドが増えている。また、当館では今まで海外OTAとの契約がなかったが、最近、そこを増やした。その結果、今まで10%以下だったインバウンドの宿泊比率が20~30%に高まっている」

 ――7月にレストランメニューを変更した。

 「バイキングレストランのメニューを熊野cuisine(キュイジーヌ)として販売を開始した。cuisineとは仏語で料理の意味。熊野地方や熊野灘など、地元で生産された食材を中心に約60種類を提供し、今まで以上に特徴があり、かつ、おいしい料理を提供する。ホテル浦島といえばやはり洞窟風呂のイメージが強いと思うが、前述の通り、温泉以外の部分をバージョンアップしていく」

 ――業界は人手不足が深刻だ。

 「当社もかなり厳しい状況だ。コロナ中、新卒を採用しなかったつけが出ている。今、新卒の採用活動を開始しても入社は27年だ。そのため中途採用と、定年後の再雇用でしのいでいる。他は外国人雇用だ。現在ミャンマー、ベトナムを中心に20人雇い入れている」

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浦島観光ホテル 代表取締役社長 松下哲也氏

まつした・てつや氏 1972年生まれ。1993年帝国ホテル入社。6次産業化企業や、デベロッパーなどを経て現職。52歳。

【聞き手・西巻憲司】

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